The Strokes 『The New Abnormal』感想

 

ザ・ニュー・アブノーマル (通常盤)

ザ・ニュー・アブノーマル (通常盤)

 

 

 

 

『The New Abnormal』のリリースから1年経ったということで、超今更ですが感想を書いていこうと思います。

 

グラミー賞の最優秀ロックアルバムに選ばれたり、NMEの年間ベストアルバムで4位になったり(NMEは出た当初はかなり慎重だったのに、年間ではめっちゃ上位にきてて、手のひら返しかと思いました笑)、ビリー・アイリッシュが2020年のお気に入りのアルバムだと何度も公言してたり...。

 

今ではかなり好意的に受け止められている本作ですが、リリース当初は結構賛否両論というか、ピッチフォークを初め、酷評するところも少なくなく、自分自身も良いアルバムだと思いながらもそういう意見も分かるような気がしていて、そういうのも思い出しながら書いていきたいと思います。

 

目次

 

 

リリースまで

ストロークスの新作は2017年ごろから噂されていましたが、その噂が確実になったのは2019年のニックのインタビューからだったと思います。

 

ザ・ストロークス、ニュー・アルバムをレコーディング中との報道を否定 | NME Japan (nme-jp.com)

 

ザ・ストロークスのニック・ヴァレンシ、新作が完成したことを匂わせる | NME Japan (nme-jp.com)

 

2017年の段階で本作のプロデューサーであるリック・ルービンとの作業が少なくとも15日間は行われており、作業がどの段階までいっていたかはわかりませんが、メンバー全員がリック・ルービンとともに集まってセッションしていたことが本作のデラックス盤に付いてきたフォトブックからわかっています(1万8千円くらいしました...)。

 

アルバムが4月に出るぞ!ってなったのと近いタイミング(2月くらい)でトラックリストがリークされて、後に公式が認めたんですが、そのトラックリストを見て、9曲収録で合計45分と今までのストロークスには無かった構成で驚いたのを覚えています。

 

そのとき9曲収録45分という字面からデュラン・デュランの『Rio』(1982年、9曲42分半)、プリンスの『Purple Rain』(1984年、9曲約44分)、マイケル・ジャクソンの『Thriller』(1982年、9曲42分)といった80年代のメガヒットアルバムが頭に浮かびました。

 

この構成が80年代に特にみられるものかはよくわからないですけど(『Who’s Next』とか他にも色々あると思うので...)、それまでの約10曲35分前後(例外は3rd)のような60年代、70年代のロックンロール、パンクロック的なイメージのアルバム構成からは離れてきました。

 

他にも、ジャケットに使用されたバスキアの『Bird on Money』が1981年の作品だったり、先行で出たシングルの「At The Door」や「Bad Decisions」のMVの70年代末~80年代の感じ(曲もそうですが)、「Bad Decisions」と「Eternal Summer」の作曲に用いられた、ビリー・アイドルの「Dancing With Myself」(1981)、サイケデリック・ファーズの「The Ghost In You」(1984) など80年代というのが本作の一つのキーワードになってるのかなという感じでリリース当日を迎えました。

 

 

 

 

曲ごとの感想

 

1. The Adults Are Talking

 


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2019年5月のライブで初披露された曲です。多分、本作で最も人気のある楽曲だと思います。

この曲では1、2枚目で見られたようなマシーンっぽいドラムが鳴らされていて初期の音を思い出させます。

 

イントロではファブのドラムをループさせたものなのか打ち込みのような音で始まりますが、ジュリアンの歌が入る瞬間からスネアがより自然な音になっていますね。ドラムサウンドはかなり加工されてるとは思いますが、ポストパンク的な無機質なビートが心地いいです。

 

この機械的なビートが自分のストロークスの好きなところの一つであり、ストロークスの音楽がクールだと思うところでもあります。

 

この曲の歌詞では大人という語に対して、デビュー当初のバンドの周りにいた人を指しているような部分があったり、はたまた政治家を示しているようにも感じたりで様々な解釈ができそうです。

最後に株主というワードを出しているのが面白いですが、身の回りの権力というものがタイトルにあるような大人なのでしょうか?

 

Saturday Night Liveに出演したとき、最後に 〈左と右が毎時間議論するとき / 特殊権益が勝つ /  選出されてない力だ〉と付け足したのが印象的でした。

 

 


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2. Selfless

 


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イントロから「何か今までのストロークスとは違うな」と感じる曲ですが、歌詞もこれまでにはあまり見られないくらいストレートなラブソングですね。

 

これまでのストロークスの良く言えばクール、悪く言うと「閉じたロックンロールエリート意識」(山崎洋一郎さんのストロークス来日ライヴ評から)のような態度から考えると、無償の愛というテーマを本作で最もエモーショナルな歌唱で歌い上げるジュリアンにはこっちがなんか感動してしまいます。

 

特に2番の ”Life is too short / But I will live for you" のところがめちゃくちゃ良いですね、自分的にはジュリアンの本作のベストボーカルかもしれません。

 

本作の歌詞を見るうえで、ジュリアンの離婚というのは大きなポイントだと思うんですが、それがこの曲にも影を落としているようにも思えます。

 

 

 

3. Brookyn Bridge To Chorus

 


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自分が本作で最も好きな曲です。

 

ストロークス、グラミー候補アルバム『The New Abnormal』が必聴である理由 | BELONG Media

 

上記サイトではアメリカのニュー・ウェイヴバンド、ザ・カーズを意識した曲と指摘されています。

そのサウンドや歌詞、YouTubeでのサムネ画像が車であること、そして「Brooklyn Bridge To Chorus」というタイトル。

2019年に亡くなったThe Carsのリードヴォーカル、リック・オケイセックを意識したものであることは間違いなさそうだ。

 

ジャケには確かに車が描かれていますし、”The 80's Song(略)When he said, This is the beginning of the best years” の部分はカーズの「Good Times Roll」のこととみなせなくもないかな~と思いました(正しくは78年の曲ですがカーズ=80年代のバンドということで...)。ただ、このあと”False, break” と繋がるので、このラインはストロークス自身のことを指しているのではという解釈が一般的のようです(デビュー当初とその後)。

 


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 ただ、リック・オケイセックが亡くなる1週間前からアルバムのミックスの段階に入っていたということで、リックの死を受けて作成されたものではないのかなとも思います(もちろんこの曲にはカーズの影響はあると思います)。ストロークスの影響元はカーズ云々というのは前から言われてますし。

 

ニュー・ウェイヴ、パワーポップな楽し気な曲調とは裏腹に歌詞はかなりジュリアンのパーソナルな部分が前面に出てて、恐らく少年時代から今に至るまでの人との関係を80年代のバンドと曲とともに振り返ってるような感じですかね。

 

酒に溺れて、他人から差し出された新たな友情関係を拒みながらも、新しい友達が欲しいと叫ぶ様は、1stアルバムの「Last Nite」で描かれた「誰も自分のことを理解してくれないけど、俺も自分のことなんて全くわからない」というような部分を思い起こさせます。

 

今書いてて気づきましたが、2番に ”I was thinking about that thing that you said last night, so boring"(君が昨夜言ったことについて考えていたんだ、とても退屈だ) という一節がありますが、これは「Last Nite」の歌詞の最初ともリンクしそう。

〈昨日の夜、彼女が言ったのは、”ベイビー、私はとても落ち込んでるの、無視されてるみたいで、うんざりするの” 〉

 

また、”Juliet I adore”のJulietとは恐らくジュリアンの元奥さんのことを指してますね。

 

本作にはジュリアンの離婚が影響したであろう歌詞がいくつかありますが、そのなかでも特に直接的に言及している部分かもしれません。

 

 

 

4. Bad Decisions

 


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いかにもストロークスらしいロックナンバーです。

 

ビリー・アイドルの曲から一部メロディーが引用されています。2020年はストロークスだけじゃなくて、マイリ―・サイラスもビリー・アイドルと共演したりしてて(普通にカッコいい)、なにかリバイバル的なものがあったんでしょうか?個人的にはなんかダサいイメージもあったんですが...(坂上さんとか

 

MVはストロークスのクローンの通販番組ということでコミカルで面白いんですが、こういうみんなが求めるような曲は簡単に作れるよという皮肉のようにも映ります。

 

歌詞に”Moscow 1972"といった1972年にモスクワで行われた米ソの首脳会談を指す部分があったり、政治的な歌詞とも読むことが出来ますが、個人的に1番注目したいのが”Pick up your gun. Put up your gloves”の部分で、これは1枚目と2枚目のジャケットのことを示しているのでは思われます。

 

 

 

 

 

ここで示されているのは3rd以降迷走しているとよく言われる批判に言及しているのか、それを本作で最も初期に近いサウンドの曲でやってくるというのは面白いですね。初期に近いといってもギターの音自体は1、2枚目のラフな感じというよりもエコーがかかったような80年代っぽい質感ですが。

 

〈愚か者のアドバイスは受けない/君の言うことは聞かない〉〈君は、君は俺の言うことを聞かなかった / けど俺も、俺も君の話を聞かなかった〉 とジュリアンは語りますが、もしこの部分がこれまでのストロークスのキャリアのことを振り返っているのなら...と色んな想像を膨らませられるような歌詞です。

 

 

 

5. Eternal Summer

 

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サイケデリック・ファーズの「Ghost In You」を引用した曲ですが、歌詞にサイケデリックって出てくるし、曲もちょっとサイケな感じはするしでストロークスの曲を形容する際に珍しくサイケデリックという単語が使われる曲です。

 

曲の長さは6分15秒とストロークス史上最長の楽曲で、このアルバムではこれまでの最長を5曲も更新してるんですが、そのなかでも最も長い曲です。どこかの媒体で「3分くらい余分だ」って書かれてましたね(笑)。

 

歌詞は結構はっきりと政治的というか気候変動的なところに突っ込んでます。ジュリアンもロッキンオンのインタビューでEternal Summerに関しては政治的かもねと語っていました。

 

夏をテーマにした気候変動に対しての曲というと最近だとチャイルディッシュ・ガンビーノの「Feels Like Summer」を思い出します。

 


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そもそも本作のタイトルからしてカリフォルニアの山火事が背景にあったということで、このアルバム全体が社会的な意味を帯びていると取れますが、歌詞においてはあまり自分たちの外の世界に関心を持たないように見えるというか、何を指しているかわかりづらい歌詞が多かったようなストロークスがわりとストレートに気候変動についての曲を作ってきたのは意外かもしれません。

 

少しファンクっぽい要素もあり、ストロークスの新機軸ともとれる曲ですが、ジャムセッションの中でできた曲らしく、これまでにない質感を持った曲ですね。

 

 

 

6. At The Door

 


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本作の中で一番最初に公開された先行シングルです。

 

ドラムレスな曲というのはこれまでもニックがメロトロンを弾いてるだけの「Ask Me Anything」や「Call Me Back」があったのですが、先行シングルでこれを出してくるのは流石に(自分含め)ネット、ツイッター上での驚きの反応がすごかったですね。

 

この曲に関しては元Snoozer編集長、田中宗一郎さんの感想がすごくいいなと思いました。

 

 

 「誰も作ってないけど誰が必要としてるのかはさっぱりわからない」というのはこの曲にぴったりの評だと思います。

 

なんかニール・ヤングの『Trans』に近い雰囲気ありますよね。

 


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妙に未来的で宇宙的な感じもする曲ですが、実はバンド側はもっと普通にロックソングにしようと思っていたところ、プロデューサーのリック・ルービンにこれでいこうって言われたらしいですね。さすが。

 

ビリー・アイリッシュ川谷絵音の本作のお気に入りの曲がこの曲ということで、最もストロークスらしくないシングルに注目が集まっているのが面白いんです。

そういえばドラムレスというのはフランク・オーシャンの『Blonde』で注目された要素の一つですし、ビリー・アイリッシュの「when the party's over」のようなドラムレスなピアノバラードが大ヒットしていることを考えると割とアリなのかもしれませんね。

 


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あと、どういう意図があったのかはわかりませんが、この曲で左チャンネルから聴こえるアナログシンセのような音はニックのギターみたいですね。ニコライが「ニックはシンセギターみたいなクレイジーなペダルでこれを弾いていたんだ」とインタビューで語っていました。

 

他に確認したら普通にジュリアンが動画でそのことについてしゃべってました。

 

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13分くらいのところでそれについて触れています。

 

 


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多分上の動画のようなエフェクターを使ったりしたんでしょうか。

 

キーボードを使わずにギターでシンセの音を出そうとするのは2ndアルバムの頃からそうですが、本作では全体的にギター(特にニック)がかなりシンセに寄った音作りがされています。

ニックはコンピューター内のシンセサイザーにギターを繋いで演奏したのもあったということでシンセサウンドをギターで演奏するということにこだわったみたいですね。

 

歌詞は難解で真意が読み取りづらいですが、〈俺たちはゲームに負け続けてきたんだ、これまで何度も〉と締めくくられているのには、ストロークス、並びに2000年代のニューヨークにおけるインディロックシーンの隆盛と衰退を想起させられます(最近、そこら辺を振り返った書籍とかも出てますし...)。

 

 

 

 

 

7. Why Are Sundays So Depressing

 


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僕が『The New Abnormal』で1番好きな瞬間はこの曲のイントロです。ドラムの音が最高です。

 

恋人と別れて日曜日のありあまる時間が憂鬱だ、という感じの内容の曲ですが、ジュリアンの離婚のことを暗示してるんでしょうか。本人はロックダウンを受けてのインタビューで、外出できないのはそんなに苦じゃないよ、料理とかできるしと語っていましたが....。

 

「Selfless」と並んでこのアルバムでは比較的明るい感じが出てていいですね。

 

2ndアルバムにもつながる気だるさを感じられるのが個人的に好きなポイントです。

 

この曲はアウトロが長めにとられてるのがいいですね。

初期は歌が終わるとスパっと曲を止めてしまうところにある種のスタイリッシュさがあった気がするのですが、飢えたままなんだと繰り返したままのジュリアンに合わせるように、同じフレーズを続けていくのが歌詞の雰囲気に合うような気がします。

 

 

8. Not The Same Anymore

 


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本作の中では一見地味な曲ですが、ジュリアンのボーカルパフォーマンスと歌詞の興味深さではかなり上位に来る曲ではないでしょうか。

 

「At The Door」と関連性のあるような歌詞ですが、後半はかなり独白的ですね。

 

2番のサビの途中までは〈何か間違ったのか?/ 上手くいったかそうではないのかは定かじゃない〉としながら、〈怖かった / 台無しにした / 変えられなかった / もう遅すぎるんだ〉とし、最後には 〈全てがよく思い出せない〉と結びます。

 

歌詞自体もかなりエモーショナルですが、それに合わせるジュリアンのボーカルの必死な感じが良いです。本作のジュリアンのボーカルは全体を通して素晴らしいですね。

 

1stのわざと歪ませた、公衆電話からかけているような特徴的なボーカルもいいんですが、吹っ切れたように自身の表現力を限界まで引き出そうとする姿勢は聴いててかなり心に来るものがあります。

 

この曲も前曲と同じく、アウトロが長めにとられていますが、こちらは内省的な空虚な空間を作り出しているような感がありますね。

 

 

 

9. Ode To The Mets

 


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非常に素晴らしいアルバム最終曲です。

ピッチフォークもこの曲だけは褒めてました。

 

BLACKPINKのジスもこの曲を自身のプレイリストに入れていて、ちょっとだけ話題になりました。ジュリアンとダフト・パンクとのコラボ曲である「Instant Crush」も入ってるし、ストロークス好きなんでしょうか?(ニルヴァーナから「Dumb」を入れるチョイスがいいですね)

 

 

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オーケストラの楽器みたいで曲に重厚感が出てるアルバートのギターエフェクトが良きです。

 

歌詞はこれまでの通り、内省的なものととることもできますけどいろいろな解釈も出来そうです。

MVに海に沈んでいくニューヨークの描写がありますが、「At The Door」でも最後に ”wating for the tide to rise”(潮が満ちるのを待っている)と歌ったり、「Ode To The Mets」の歌詞に ”He's at the door" という部分もあって「At The Door」に関連する部分が少し感じ取れます。

 

君に聞こえている静寂は / 変わっていくんだ / 耳障りで痛みに満ちた浅ましい叫びに〉 という最後の一節は『The New Abnormal』という作品のラストを飾るにはかなりインパクトがあるなあと思います。

 

ちなみに、タイトルにMetsとありますが、歌詞自体はニューヨーク・メッツとは何も関係が無く、単にジュリアンがメッツの試合を見た帰り際に書いたというだけで、ジュリアン本人はタイトルを変えようとしたもののメンバーが止めたらしいです。

 

 

 

 

 

全体的な感想

 

色んな評判を見ている限り、『The New Abnormal』はストロークスのアルバムでは3rdアルバム以降、最も多くのファンが満足できた作品ではないでしょうか。

 

このアルバムを個人的な感覚で一言で言い表すと「良い意味でらしさが無くなった」作品かなと思います。

 

今までのストロークスのスタイルって特に1枚目の『Is This It』に代表される、タイトで無駄を許さないスタイルから、音は多少変えてきても大きな枠自体は変わっていない印象でした(2016年に出たEP、『Future Present Past』では少し変わってきたようにも感じます)。

 

それが本作では、曲の最後にスタジオ内での会話が挿入されていたり、演奏自体も少しルーズな瞬間も見受けられるようになって、それがバンド自体にすごく余裕が出てきたように感じさせます。全体としてはダフト・パンクとジュリアンの「Instant Crush」にも近い雰囲気があるでしょうか。

 

歌詞もこれまでよりもオープンマインドになってきて、これまでの自分たちを振り返るような内省的なものから政治的、社会的な問題にまで突っ込む姿勢(これはヴォイズのアルバムでも見受けられましたが)は今までにあまり見られなかったものであり、『Is This It』の叙情的でありながら身の回りの出来事を描写するようなものが多かった歌詞に比べて、ジュリアンの作詞家としての成長が感じられます。

 

あと、ボーカルパフォーマンスとしてはストロークス史上、最も良い作品ではないでしょうか? これも本作のサウンド全体に通じる肩の力が抜けたようなところと無関係ではないでしょう。

 

このように、本作には今までのストロークスとは異なる点がいくつか見受けられますが、何がストロークスに影響を与えたのかを考えていくと、単純に前作から7年の時間が経っているからということもあると思いますが、プロデューサーのリック・ルービンの存在も大きいと思います。

 

ジュリアンはインタビューなどでこれまでと変わった点を指摘されると大体「リックがその答えだね」と返すので、リック・ルービンが本作において、かなり重要な位置を占めていたのは間違いないでしょう。

リック・ルービンがディレクションしてくれることで生まれる安心感というのはやはり大きかったのかと推測できます。

 

あとはメンバーの半数以上がニューヨークからロサンゼルスに移住したこともあると思います。

ジュリアン、アルバート(元々LA出身)、ニックの3人がロサンゼルスに移り、ファブとニコライのリズム隊はニューヨークに残ったままという構図になっています。

なので、これまでの彼らから感じた、ニューヨークの都会的な部分は少し減退しているのかもしれません。

 

それにアルバムを録音したリック・ルービンのスタジオ自体がロサンゼルスということで、初めてストロークスがニューヨーク以外で全て録音したアルバムであり、アルバムタイトルもカリフォルニアの山火事から来ていることまで考えると本作のストロークスをニューヨークのバンドと捉えること自体が難しくなってきますね。

バスキアのアルバムジャケットがかすかに彼らのニューヨーク的な部分を繋ぎとめているとも言えそうでしょうか。曲名とかMVにはニューヨーク要素はあるんですが。

 

音自体もカラッとしていて、西海岸の音楽を感じさせる雰囲気もあります。本作は彼らにとって初めてのLA的アルバムとも言い換えられるかもしれません。

 

アー写もなんかすごく明るくなりましたよね。『Angles』の頃と全然違う(笑)。

 

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アルバートはビシッと決めてる感じありますけど、他は服装がちょっとラフな感じになりましたね~。全体的に明るくて、表情がみんな朗らか。

 

『Angles』の頃はこんなでしたからね。

 

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誰一人笑ってないし、3人もサングラスつけてますね。この頃はメンバー間の仲が良くなかったそうですが、写真を見比べるだけでも、大きな変化があったんだなと感じさせます。

 

全体的に歌詞やサウンドがエモい作品ではありますが、そこが逆にあまり良くないのか、メディアのレビューとかみると「ちょっと内省的過ぎるし、バンドがどこに向かっているのかよくわからない」的なこと書かれてたりして、「まあ言ってることも分からんでもないかな~」みたいな感じなんですが、確かにB面(6曲目以降)は歌詞もサウンドもわりとシリアスな感じでストロークスのバンド・ストーリー的な部分にそれほど興味ない人からしたら退屈に感じる人もいるだろうとは思います。後半の曲どれも遅いし、長いですしね。

 

ただ、解散もあり得るかもみたいな状況からアルバムをリリースしてくれて、グラミー賞も取るという理想的なカムバックを果たしてくれたというところで、ファン(自分)からしたら中々フラットな状態で聴けないというか、聴く度に感動するし、ストロークスが自分たちにしっかり向き合って音楽を作っているということがとても伝わってきて、それだけでもう良いかなっていう気持ちになるんですよね。(音楽自体が良いと思うのはもちろんですが)

 

ジュリアンは度々、リックとは関係も良好だから次作も一緒につくるかもということを話しており、グラミー受賞後のインタビューでも7枚目について冗談も交えながら話していたので今度はもうちょっと短いスパンで次が出るんじゃないでしょうか?

 

次作についても期待は高まりますが、とりあえず来日公演もお願いします(泣)。